クラシック音楽館をいくつか撮りためていて、そろそろ消さなければならないので、内容を記録するとともに、感想なども残しておこうかと思います。
クラシック音楽館で好きなのは、リハーサル風景やそのときの指揮者の指示などに触れられたり、指揮者や奏者のインタビューなどが聞けることです。
それもちょっと残せたらなぁと思っています。
N響演奏会 シューベルトプログラム
NHK交響楽団 10月公演
シューベルト:交響曲第2番 変ロ長調 D.125
シューベルト:交響曲第4番 ハ短調 D.417 「悲劇的」
指揮:鈴木雅明
管弦楽:NHK交響楽団
2020年10月28日(水) 会場:サントリーホール
第2番と第4番はシューベルトが17歳から19歳にかけて作曲した曲。(シューベルトは1797-1828で31歳で亡くなっている)第2番はシューベルトが17歳から18歳にかけて作曲した若々しく活力に満ちた作品。第4番は悲劇から歓喜へドラマティックでスケールの大きな作品。シューベルト初期の傑作のひとつ。
指揮者 鈴木 雅明氏インタビュー
ブロムシュテットさんはね、初期のシューベルトのシンフォニーと指定されていたので、そこから僕は2番を選んだんですけど、2番は若くて溌溂としたシューベルトのキャラクターがよく出ていて、ある意味モーツァルト的なシンフォニーで、第4番はベートーベンに近づいているかなというのがあって、この2つが長調と短調ですし、コントラストがあって面白いと思ったんですね。
シューベルトの初期のシンフォニーを古典派アプローチでとらえる鈴木雅明さん。フレーズのつくり方、音のバランスなど細かいところまで徹底的に分析し、めりはりの利いた立体的な音楽づくりへとつながりました。
リハーサル中
129、130はアクセントがあるんですけど、131はないんですよ。ないけど、当たり前のフレーズの構造として3小節目がより大きいのは決まっていると思うんですね。
だから、古典派の人たちはフレーズの構造とか拍の構造は基本常識として前提されているということが大事だと思っています。
だから管楽器のみなさんも131小節の頭にもうちょっと響きが欲しいんですね。フレーズのバランスを作るために
そして頭の音はピアノだけど、ちゃんとスピークしてほしいんですよ。もっともっと音自体が弾むようにエネルギーがもっと詰まっているように
31年の生涯で600曲以上のドイツリートを作曲した歌曲王・シューベルト。彼の交響曲はとても歌曲的だと鈴木さんは言います。
この両方とも2楽章はとてもリート(歌曲)のフレージングで、4分の2拍子でゆるやかなリズム感を持っているんですよ。特に2番の方はドイツ語の韻律のね、例えば「野ばら」という有名な詩があるんですけど、言葉にぴったりとフレーズ間にあてはまるんです。「野ばら」がシンフォニーに関係あるわけではないんですけど、そういう4分の2の穏やかなリート的なフレーズを見事に反映している
そして第4番の第2楽章にはシューベルトの歌曲「ミニョンの歌」の「ただあこがれを知る者だけが」の歌詞がぴったりと当てはまるといいます。
ドイツ語の持っている強弱の音型が絶えず絶えず出てくる。このことから、ドイツ語の歌詞を思い起こさせるような感じなんですよ。
重い軽いという強弱がドイツ語の響きの問題ではなくて、常にことばの中身とむずびついてきたというのが、ドイツ語とドイツ音楽の歴史なんですね。そういう中でシューベルトの2楽章のリートの形式のつくりは、言葉と音楽のつながりという観点からみるとバロック的といっていいですよね。シューベルトのリートというのは本当に美しいセンスがいっぱいあるけれど、しかし、シューマンとかブラームスとかと比べると、その旋律そのものだけが美しいのではなく、ことばとの結びつきに意味があるのでね。歌詞を取り去って旋律だけ弾いても、それほど興味深いとは言えない旋律がたくさんあるんですけど、歌詞があることで音楽の意味が非常に深められる。逆に言うと音楽の抑揚というのが、歌詞をほうふつさせることで音楽の意味がわかるっていうかね。そういう点が非常に面白いですね。
個人的に確認した奏者
コンマス 白井圭
ファゴット 水谷上総
クラリネット 松本健司
ホルン 今井仁志/勝俣 泰/(木川博史/野見山和子 第4番のみ)
トランペット 長谷川智之
感想
リハーサル風景とお言葉がとても興味深いと思いました。このフレーズの構造的に書いてなくても3小節目は大きい、とか、音楽の構造的に前提としてあることは楽譜にわざわざ書いてないとか、そういうことを最近よく自分の楽団でも指揮者から言われることだなーなんて思いながら見ていました。「音楽」というのを、感覚的にではなくて、もっと学術的に知りたいと思います。
リハーサルのときの指揮者の言葉って本当に興味深いです。さまざまなボキャブラリーや伝え方があるんだなぁって。だから「クラシック音楽館」のリハーサル風景って、見せてくれる時間はとても短いけど、とても好きです。
シューベルトのシンフォニーについてのインタビューもすごく興味深いと思いました。そういえばシューベルトのシンフォニーってあまり印象にないし積極的に聞かないなぁと思います。けど、それって旋律だけしか、私が理解できてないからなんだと思います。
シューベルトの「魔王」は学校の音楽の授業で聴いた曲の中でナンバー1ぐらいに心に残りました。それってやっぱり歌詞と一緒に聴くからなのかなと。まぁ、日本語訳とメロディの絶妙な組み合わせなのかもしれないですけど……。
シューベルトのシンフォニーの良さを、本当の意味で楽しめない自分の知識不足が悔しいですし、知識不足で絶対に知ることができなかっただろう味わい方を、少しでも教えてもらえたことに、ワクワクしました。
シューベルト:交響曲第2番 変ロ長調 D.125
聴きやすいシンフォニーだとも思いました。第1楽章はどんどん闊達に、かっこよく展開し、第2楽章は昼下がりにニコニコとしながら聞きたい曲でした。第3楽章はまたかっこよく凛々しい印象。ちょっと短調の3拍子って好き。第4楽章は再びかっこよく溌溂と。いろんな雰囲気で、でも、一貫してどこか優しく明るくとても楽しめる曲でした。賛助の時はベートーベンの印象が強かったですが、シューベルトもやってみたかったな。もっと好きになれたかもしれません。
シューベルト:交響曲第4番 ハ短調 D.417 「悲劇的」
ドラマティックということだったので期待して聞いていたのですが、第2楽章の美しさにうっとりうっとりしてしまいました。ホルンがおっそろしい高さの音を吹いてた……それは出だしを外しても仕方ない……。でも、音が美しくてうっとりしちゃう。
シューベルトの交響曲ってこんなにかっこよいんだなぁと思いました。「未完成」を若いころに初めて聞いたときに私の受け止め方が悪かったので、「シューベルトのシンフォニーはもういっか」ってなっちゃってたけど、こんなにドキドキわくわくできるんだなと思いました。昔の印象を引きずるのはやめようと思いました。
でも「悲劇的」も短調なイメージもあんまりなかったなぁ。ちなみに「悲劇的」はご自分で標題を付けられたそうです。シューベルトの曲は、きれいで透き通っていて、悪いことしてみようとするけど、悪いことできない善人みたいな感じだなぁと思いました。
鈴木氏の指揮は、かっこいいです。好きです。
コンサートα
2020年のコロナで来日がかなわなかったブロムシュテットの過去の演奏。
第1762回NHK交響楽団定期公演
ブラームス:交響曲第4番
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
管弦楽:NHK交響楽団
2013年9月27日 NHKホール
個人的に確認した奏者
コンマス 堀正文
チェロ 藤森亮一
フルート 神田寛明
ホルン 福川伸陽/勝俣 泰(あと二人あまり見ない方でした)
トランペット 菊本和昭
感想
さすが、なんか、こなれている感のあるブラームスでした。
ブロムシュテットさんの指揮は本当に幸せそうなので、見ていて幸せになります。
けど、リハーサル厳しいんですってね。あんなにニコニコされてるのになーって毎回思います。
ちょっと第1楽章はあれこの演奏はホルン調子悪いのかなって思いましたが、第2楽章はさすがに美しかったです……。その後もどんどん引き込まれて行って、やっぱり名曲は名曲ですし、ブロムシュテットさん指揮のN響のブラームスは好きだなぁと思いました。
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