【N響アワー】生誕100年  朝比奈隆の芸術

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ベートーベン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67 から 第1楽章(1994年6月4日)
ベートーベン:交響曲 第4番 第4楽章 から 一部分(1995年12月13日)
ブルックナー:交響曲 第8番 第3楽章 から 一部分(1997年3月6日)
ブルックナー:交響曲 第4番「ロマンチック」 から 第3楽章後半部分から4楽章(2000年11月3日)

【指揮】朝比奈隆

感想

朝比奈さんって、亡くなられた頃に知ったので、あんまり聞く機会がなかったなぁと思います。
ブルックナーで有名なイメージがあるのですが、ベートーヴェンも相当の数を演奏されているらしいです。
そして、随分なお年まで現役でおられたんだなぁと、びっくりしました。
大阪フィルハーモニーを生み、育て上げた素晴らしい指揮者さんだったんですね(今さらで恥ずかしいですが)。

下野さんがゲストで来られていて、ちょっと嬉しかったな。

ベートーベン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67 から 第1楽章
随分と丁寧に演奏をされているなと思いました。
私は、スクロヴァチェフスキの『運命』が大好きなので、とってもゆっくりだなぁと感じてしまいます。
その分、たっぷりという感じでしょうか。あの「ダダダダーン」も、本当にたっぷりです。
そのたっぷりさが、ときおり胸に染み込むのですけども・・・・・・。
「うわーうわー」と圧倒されるような演奏ではなくて、なんだか、音を一つ一つ聞かせるような演奏だと感じました。

あと、朝比奈さんの生い立ちを説明されているときに、少しだけ第4楽章が流れるんですけど、その1部でめっちゃ鳥肌立ちました。
あそこに繋がる第1楽章なら、この演奏がぴったりかもしれないと思いました。
これは、最後まで聞いてみたい!と思いました。
テンポはあまり好きではないかもしれないけど、でも、あの第4楽章へ繋がる第5番は最初から聞いてみたいと思いました。

ベートーベン:交響曲 第4番 第4楽章 から 一部分
第4番の第4楽章は、いつも「かっこいい!」と気分が高揚するんですけど、なんか、どちらかというと本当に「たっぷり」だなぁと思いました。ヴァイオリンの刻みがこんなに気になったのは、初めてかも。
なんか、第6番でも聞いている気分になりました。「かっこいい」よりかは、こうゆったりと音の響きと形を楽しむような演奏だと思いました。

ブルックナー:交響曲 第8番 第3楽章 から 一部分
あ、これは・・・・・・いいですね・・・・・・。第8番はあんまり聞かないので(最近やたらと第3番を聞きます)、この速度が一般的なのかどうかはわかりませんが、私は好きです。
音の伸びを追うだけで、ちょっと涙が出そうになります。
ホルンのハーモニーが素敵です。

ブルックナー:交響曲 第4番「ロマンチック」 から 第3楽章後半部分から4楽章
朝比奈さん92歳のときの演奏だそうです。
こんな風に思うのは、はなはだ不遜だとは思うのですけど・・・・・・「あ、なんか、急にN響が上手くなったような気が(とくにヴァイオリン)」と思ってしまいました。気のせいでしょうか・・・・・・。

うーん。ちょっと言葉にするには難しい気持ちになりました。
なんやろ。「一つのある完成した(正しいという意味ではなくて、求めている方向性がはっきりしているという意味合いに近い)響きがあるな」というか、私のなかで「ブルックナーってこんな感じ」と思っているものに、「人としての柔らかさ」というか「優美」というか「甘さ」というか・・・・・・うーんそういう「暖色」っぽさが加わって、なんだか愛しいものに感じました。
「ブルックナーってなんとなく、黒に近くて光を当てたら紺色から深い青になる」というイメージが、「あ、そんなんばっかりじゃないんだなぁ」と思った瞬間がところどころにありました。

この確実に作られる響きが、あのブルックナー独特の音の響きを印象深くして、ものすごく心に響くのかなぁと思いました。
そしてそんな風に思っていた途中で、朝比奈さんの姿を見ながら、「そうだ、この方、もういらっしゃらないんだ」と思ったら、大きな喪失感に襲われてしまいました。

最後の最後の響きに、涙が溢れてきて、「一度、この響きの中に身を置いてみたかった」と強く強く思いました。

エピソード

ちょっといいなぁと思ったので、メモします。
下野さんが大阪フィルハーモニーで指揮者デビューした公演は、自分が1曲目を振り、朝比奈先生が2曲目を振るという公演でした。下野さんがおっしゃるには「前座」的な役割であったにもかかわらず、公演のポスターに載せられた写真は朝比奈先生と同じ大きさでした。
本来なら、朝比奈先生が大きく、下野さんが小さく載るのが普通だったのに、そうなったのは、朝比奈先生が同じ大きさにするようにと指示されたそうです。
一緒の公演で、同じ指揮者という立場なのだからという思いがあったのでしょうとのことでした。
下野さんはそれを朝比奈先生が亡くなってからお知りになったそうですが、なんだかそのエピソードのどこをとっても、朝比奈さんという方の人柄が偲ばれました。

今日の池辺先生

朝比奈さんと会ったときに「指揮者って若くてもすぐに食べていけるのかね」というような話をしていて、「指揮即ぜ食う(色即是空)といいますからね」と言うと、すごく喜んでくださって「飲みに行こう」と誘ってもらったというエピソード。池辺先生って、どこでも・・・・・・徹底されてるなぁ。

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