クラシック音楽館をいくつか撮りためていて、そろそろ消さなければならないので、内容を記録するとともに、感想なども残しておこうかと思います。
クラシック音楽館で好きなのは、リハーサル風景やそのときの指揮者の指示などに触れられたり、指揮者や奏者のインタビューなどが聞けることです。
それもちょっと残せたらなぁと思っています。
オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー第4夜
オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー 名古屋フィルハーモニー交響楽団
ベートーベン:交響曲第7番 イ長調 作品92
[アンコール]ベートーベン:交響曲第3番『英雄』より第3楽章
指揮:川瀬賢太郎
管弦楽:名古屋フィルハーモニー交響楽団
2020年11月14日(土) 会場:愛知県芸術劇場コンサートホール
名古屋フィルハーモニー交響楽団
愛知県芸術劇場を中心に活動しています。名フィルの愛称で親しまれています。
名フィルが誕生したのは1966年毎年年末の第9を演奏していた音楽家の呼び掛けて創立しました。つまりベートーベンがきっかけで生まれたオーケストラなのです。
楽団を率いるのはこの希望のシンフォニーに登場する指揮者のなかで最も若い、川瀬賢太郎35歳(当時)
リハーサル風景
わずかなことです。クレッシェンドがかかり始めたとき、ベースが仕掛けるのを待ってください。
2011年から名フィルの指揮者を勤め、去年(2019年)正指揮者に就任しました。(2023年4月から音楽監督)
今回川瀬さんが取り組むのがベートーベンの交響曲第7番です。
川瀬賢太郎さんインタビュー
ベートーベンのシンフォニーの中では多分デビューして13年14年経ちますけど、一番振っているシンフォニーだと思います。だからこそ7番を通じて新しい発見もあれば、マンネリ化になってるなとか、自分の物差しのような作品だというところがあるので。
川瀬さんはこの曲を演奏するうえで気心の知れた名フィルとだからこそ大切にしたいことがありました。
リハーサル風景
同じところでステイせずにホップステップ。ジャンプがあると思ったらジャンプしない。
そういうことです。そして、もっともっと「冗談でした」みたいな感じで、コントラスト、もう少しだけ。お願いします。ダイナミクスです。
インタビュー
常に我々の想像を裏切り続けるようなサプライズが、1楽章から4楽章までいろんなところに仕掛けられている。今回名古屋フィルとは、そこを、改めて勇気をもってフレッシュに楽譜を読み直して、あたかもついさっき出来上がった楽譜と我々が対峙しているような新鮮さを今回の演奏に求めています。
ベートーベンをきっかけにして生まれた名フィル。今年は生誕250周年を祝うプログラムを用意していました。しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響により舞台で演奏できない日々が続きました。
7月無観客の配信コンサートで4か月ぶりに演奏活動を再開。そのときのプログラムがベートーベンの交響曲第7番でした。
首席ホルン奏者 安土真弓さんインタビュー
無観客ではあったのですが、すごく自分の中で印象に残っていて、またこうやってご縁があってベートーベンの7番を、今度はお客様がいる状態でお届けできるというのが自分の中では嬉しくて、楽しみではあるなと思っています。
コンサートマスター 日比浩一さんのインタビュー
コロナの間は、本当に1年ぐらいできなんじゃないかと思っていたので、できて嬉しいし、聴きにきていただいて期待されることは嬉しいし、我々も楽しみにしてくださる期待にこたえたい
川瀬賢太郎さんのインタビュー
久しぶりにコンサートをやりますとなって、数日前から胃がキリキリすることが、僕にとってはすごく自分が生きているとか、音楽をすることがイコールなんだなと思いました。
そして、お客様の拍手がこんなに、嬉しいんだというのが。オーケストラの音よりもお客様の拍手の音の方が世界で一番好きな音だと思いましたもんね。
そういう意味では、作品どうこうよりも、自分が音楽家として生きる姿勢というものが明らかに変わったから、音楽もひょっとしたら変わっているかもしれないかなと思います。
リハーサル風景
同じことが何回も続くから、以下同文で、毎回同じなのは絶対嫌です。毎回フレッシュな16分音符。
感想
ベートーベンの7番というと、どうしても「のだめカンタービレ」のドラマのテーマとしての印象が強いです。今回のインタビューでおっしゃっていた『常に我々の想像を裏切り続けるようなサプライズが、1楽章から4楽章までいろんなところに仕掛けられている。』というのが、「のだめにふさわしい選曲だったんだなぁ」と納得してしまいました。
ベートーベン:交響曲第7番 イ長調 作品92
こんなに軽く、優しく、楽しそうなシンフォニーだったっけ?と思いました。
爆発的な歓喜の一歩手前というような、とてもとても嬉しいんだけど、ちょっと内緒にしておきたい、けど、嬉しい!というような第1楽章だと思いました。有名なフレーズのホルンの音がとても伸びやかで美しくて、それがそう私に思わせたのかもしれません。
第2楽章はけっこうあっさり目な演奏だなと思いました。なんていうか、私がこの手の演奏に、ねばりっけを求めすぎなのかもしれないです……。
第3楽章は強弱がすごく効いてて、第4楽章はそんなに焦るテンポでもなく、いい感じに落ち着いた演奏だなぁと思いました。しかし、さすがに最後の盛り上がりはわくわくしました! ホルン、大変そう……。
全体的に、強音もとっても理性的という感じがして、すごく聞きやすい7番だったなぁと思います。
オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー 札幌交響楽団
ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93
指揮:秋山和慶
管弦楽:札幌交響楽団
2020年10月6日(火) 会場:札幌コンサートホールKitara
札幌交響楽団
北海道札幌市。札幌コンサートホールKitaraを拠点に活動する札幌交響楽団です。
タクトを振るのは秋山和慶。1988年から1998年札幌交響楽団ミュージックアドバイザー・首席指揮者を勤めました。
札響の愛称で親しまれている札幌交響楽団は、1961年札幌市民交響楽団として誕生しました。北海道らしいスケールの大きい、透明感のあるサウンドが持ち味の札響。50年以上にわたって地元の音楽文化を支え続けています。
コンサートマスター 田島高宏さんインタビュー
みんなが伸び伸びと弾けるようなオケだと思います。人間的な人が多いです。うまくいえないんだけど、あまり自分の感情を殺しすぎない。嫌なことは嫌って顔にも出す、態度にも出す(笑)
首席オーボエ奏者 関美矢子さんインタビュー
やっぱり北海道のオーケストラですので、すごく雄大な自然に囲まれて普段過ごしていますし、ダイナミックなときにゴォーっていう響きがしてくるんですね。というのと、弦楽器とかのすごく透き通った一面というのも持っていて、より引き立つというところですね
オーケストラの演奏を北海道の自然の中で楽しむ野外コンサート。地域に根差した音楽活動を続けています。
指揮者 秋山和慶さん インタビュー
大自然の豊かさと季節の移り変わりのはっきりとした春夏秋冬のなかでの音楽活動というのが、生活に追われているようなかんじというのは無いといったら変だけど…大都会のオーケストラというのはゆとりがないというか、気持ちが荒々しいというときがあるのね。だけども、札響はおおらかだし、音楽をするのに、きゅうきゅうしていないから、音も伸びやかだし、都会のオーケストラから比べるとうらやましいなと感じますよね。
リハーサル中
(秋山さん)伸びやかに歌わなきゃならないんだけど、時間はきちんとということでね。一度やってみてください。
今回札響が演奏するのは交響曲第8番。明るい響きに満ちた傑作で、ベートーベン自身も気に入っていたといいます。しかし初演はすでに人気を博していた第7番と演奏したせいか、評価されませんでした。ベートーベンはこの作品があまりにも優れているから、聴衆には理解できないんだと憤慨したといわれています。
指揮者 秋山和慶さん インタビュー
音楽だけ聴いて、演奏だけ聴くと、ベートーベンがそんな苦しみを背負っていたというの全く感じさせないじゃないですか。うれしくて飛び跳ねているような音楽の明るい曲ということでね
1812年の夏。ベートーベンはボヘミアを旅していました。そこで以前から尊敬していた文豪ゲーテ(1749-1832)と初めて会い、芸術や音学について語り合います。第8番はそのような空気の中で作曲された作品なのです。
ボヘミア滞在中満ち足りた日々を過ごしたベートーベン。そこで耳にした郵便馬車の合図”ポストホルン”の旋律を取り入れている。
指揮者 秋山和慶さん インタビュー
例えば、「5番」「6番」なんかやっていると、本当にこう、真面目に向かわなきゃという気持ちが強くなるんですよね。「8番」は一緒になって遊んでみようよ、みたいなね。聞いていて楽しいよねっていう、少し童心に返ったみたいなね。
子供と一緒に、孫と一緒に、公園で走り回ってみたいな気持ちでやっててもいいんじゃないのっていうね。そんなシンフォニーなんです。僕にとってはね
もしかしたら、怒られちゃうかもしれないけど、とんでもないこというやつだってね
ティンパニが大のお気に入りのベートーベン。フィナーレで画期的なアイディアを打ち出します。
首席ティンパニ・打楽器奏者 入川奨さんのインタビュー
4楽章にティンパニがオクターブでファとファを連打するんですけど、乱れうちみたいなところがあるので、それが独特ですね。魅力ですね。楽しんで音量を出して、叩きまくって終わりたいです。
バチが踊るような連続演奏は、当時の聴衆をさぞや驚かせたことでしょう。
感想
秋山先生!大阪市音のCDとか、ホルンの福川さんがコロナ禍中に全国のホルン奏者を集めて出されたホルンだけのアンサンブルのCDで指揮されてたりとか、私の中で好感度の高い指揮者様です。長生きしていただきたい…。
札幌コンサートホールkitaraのステージのひな壇がいいなぁ。
ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93
第8番は本当に聴く機会があまりないので、楽しみでした。
7番と9番に挟まれて印象があまりなかったのですけど、あまり身構えて聴くシンフォニーではなくて、確かに、楽しくおおらかに聴けた感じがしました。もしかしたら、それは交響楽団の特性なのかもしれませんが…。
ベートーベンのホルンのメロディの和音ってすごく好きです。2本なのになんであんな豊かな響きがするんだろう。美しい。
フィナーレも華やかで、とても楽しく聞けました。
秋山先生の指揮の映像ってあまり見ないので、これはこれで貴重な回だったなぁと思います。
オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー 広島交響楽団
ベートーベン:エグモント 作品84
(アンコール)ベートーベン:歌劇「フィデリオ」第1幕から行進曲
指揮:下野竜也
管弦楽:広島交響楽団
語り(エグモント):宮本益光
ソプラノ(クレールヒェン):石橋栄実
2020年10月17日(土) 会場:上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
広島県広島市。広島県立文化芸術ホールからお送りするのは、広響の愛称で親しまれている広島交響楽団の演奏です。
タクトを振るのは2017年から音楽総監督を務める(2024年3月まで。現在、桂冠指揮者)下野竜也。
広島交響楽団は終戦から18年後の1963年音楽の喜びを分かち合おうという熱意ある市民の手で、アマチュアの広島市民交響楽団として誕生しました。1972年にはプロのオーケストラとなり活躍の場を広げています。
そんな広響が掲げているのは「Music for peace -音楽で平和を-」
被爆地広島で生まれ育ったオーケストラとして音楽による平和のメッセージを発信し続けています。
指揮者 下野竜也さんのインタビュー
原爆の惨禍の中から、75年草木も生えないって言われた中を、先人の皆さんが本当に泥をすすりながら、本当に苦しい思いで街を復興させて、まだまだ途中なのでオーケストラを作ったという広島市民の皆さんのエネルギーを継承しているんだってことは、忘れてはいけないと思いますし、広響の存在自体が平和のシンボルであるべきだと思っています。
首席チェロ奏者 マーティン・スアンツェライトさんインタビュー
広島って特別な町ですよね。平和の町ということで、私たちはただ楽しんで音楽を作っているのではなくて、音楽を使って大事なメッセージを運ぶ。一番大事なメッセージは、人の平和。人と人の間が平和であることで、そういう考えが深いと思います。
今回下野さんと広島交響楽団が選んだのは、オーケストラゆかりの曲でもある「エグモント」(全曲)です。
祖国の自由と平和を勝ち取るために戦った英雄エグモント。その人生を描いたゲーテの戯曲にベートーベンが作曲したものです。
指揮者 下野竜也さんのインタビュー
広響にとって「エグモント」という作品は非常に大切なレパートリーです。広響が産声をあげたときに、第1回の演奏会の1曲目が「エグモント」の序曲なんです。交響曲にも匹敵する作品。劇音楽というか劇作家としてのベートーベンを聞いていただくのが面白いのではと思いまして
今回は語り手(宮本益光さん)が物語を朗読する形で上演された。
リハーサル中
ものすごくベートーベンって変な言い方だけど、大河ドラマとか映画音楽を書かせたらおもしろかっただろうなって思うんですよね。たとえばこれなんかは、死刑宣告されたあとに流れる音楽で。まるでキャッチーでしょ。なかなかベートーベンのオペラとかドラマの曲ってやらないので、結構そのままやるとそのスジになるので…
第1コンサートマスター 佐久間聡一さんインタビュー
画面がこう、わかりやすいというか、ベートーベン先生がダイレクトに珍しく効果音的な要素もたくさん出てくるのでそこが楽しいですね。
ユニークな劇音楽「エグモント」や歴史に残る交響曲をうんだベートーベン。下野さんはその魅力をこう考えています。
当たり前のことを思いっきり大声で言う人だと思うんですよね。ベートーベンって。1+1は2とかわかりきったことを、真面目に大きな声で、1+1は2だろ!ということを振るオーケストラを使って言っているような人だなと。太陽は東から昇るんだ!とか、朝起きたらあいさつをしろ!とか。よくよく考えてみるとすっごききれいなメロディも多いんですけれど、恥ずかしいメロディも多いと思いません?なんか、レオノーレの序曲とか聞いて、ミーレドレドレドレドレドとか、まるで作曲の先生が聞いたら、なんだこのメロディは、というのが、ベートーベンにかかると、本当にフルオーケストラがミーレドレドレドレドレドと演奏する、恥ずかしい旋律もなんか心にくるじゃないですか。
自分が単純だからかもしれませんけど、そういうところがベートーベンからもらうパワーといいますか、とっても大きな魅力の一つだと思います。
感想
下野さんのインタビューの、ベートーベンの「すごく当たり前のことを大きな声で言う人」っていうのは、めちゃくちゃ腑に落ちて笑ってしまいました。
ベートーベンってすごいと思うんだけど、聴いててなんかときどきもぞもぞするというのが、それなのかもしれないです。下野さんの他の作曲者への意見も、すっごく面白そう(笑)
ベートーベン:エグモント 作品84
序曲の1音目からしてカッコイイなと思っていたら、なんかすっごいかっこよくないですか、この曲。下野さんが「今ベートーベンが大河ドラマの曲書いたら面白いんじゃ」っておっしゃってたのすごくわかる。広響さんの熱演、下野さんの情熱的なタクトもあって、序曲から気持ちが盛り上がる。
宮本益光さんの声も素敵。オペラ歌手さんなのですね。アニメの声優さんもできそうなさすがの美声。
本当に劇的な曲でした。語りと演奏が同時に進行する「メロドラマ」の部分が素敵でした。ちなみに「メロドラマ」って昼ドラのイメージがあるんですが、「音楽の伴奏が入る娯楽的な大衆演劇」だそうです。今だと「恋愛をテーマとした感傷的なドラマや映画」。
語りと音楽と、聞き入ってしまいました。そして最後の曲に入る流れにゾクゾクします。最近は序曲だけの演奏が多いとのことですが、これは語りを含めて、全曲通すのもまた面白いですね。貴重な演奏を聴かせてもらいました。
さて、時々なんか違和感あるなぁと思ったら、パイプ椅子なんですね。正面から見ると何も思わなかったけど、後ろから撮ったアングルがパイプ椅子なことにちょっとびっくりした。
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