クラシック音楽館 2022年2月13日(日)放送

クラシック音楽館をいくつか撮りためていて、そろそろ消さなければならないので、内容を記録するとともに、感想なども残しておこうかと思います。
クラシック音楽館で好きなのは、リハーサル風景やそのときの指揮者の指示などに触れられたり、指揮者や奏者のインタビューなどが聞けることです。
それもちょっと残せたらなぁと思っています。

N響演奏会 

NHK交響楽団 第1949回定期演奏会

ブルッフ:バイオリン協奏曲第1番 ト長調 作品26
(アンコール)エルンスト:夏のなごりのばら
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調 作品90


指揮:ジョン・アクセルロッド
管弦楽:NHK交響楽団
バイオリン:服部百音


2022年1月21日(金) 会場:東京芸術劇場

アクセルロッドはバーンスタインなどに師事した指揮者。N響との初共演は2010年。今回は入国がかなわなかった指揮者の代役を務めました。2021年11月に来日、およそ3か月にとどまり、5つのオーケストラを指揮しました。

ジョン・アクセルロッド氏 インタビュー

(長期滞在を決めた理由)
私が日本と大変深い関係があることを、ぜひ、みなさんにわかっていただきたいを思います。
N響と12年にわたって共演してきたということだけではなく、実は私と妻は日本で婚約したのです。京都の嵐山でプロポーズをし、幸いにもイエスと言ってくれました。でも、一番大切なことは、英語のことわざ、日本語にも似たことわざがあるかもしれませんね。「困った時の友こそ真の友」日本が困っているのを目の当たりにしました。聴衆が最も音楽を必要としているときに、ささやかながら文化的な貢献ができると思ったのと、妻が最大の理解を示してくれたのです。妻も音楽家でバイオリニストです。なので、オミクロンが世界中で猛威を振るっている中、運よく日本で活動することができました。
オーケストラと一緒に美しい音楽を作り、聴衆と共有できたことに感謝しています

服部百音(もね)数多くの国際コンクールで優勝した、今、活躍が期待されるバイオリニストの一人です。今回演奏するブルッフの第1番に百音さんが初めて触れたのは、バイオリンを始めて間もないころでした。

服部百音氏 インタビュー

(ブルッフの協奏曲 初めての出会い)
幼稚園の頃に、この曲を勉強しようと先生に言われて、聴いたときに、子供ながらにとってもかっこいい曲だなという印象がありまして、特にあでやかな3楽章がすごく好きで、早く弾けるようになりたくて、練習嫌いだったのですが、珍しく自主的に練習していた記憶があります。

その後、初めてこの曲をオーケストラと共演したのは、2019年の19歳のころでした。アジアユースオーケストラとの1か月にわたるコンサートツアーで8回演奏しました。

(オケと初めての演奏)
もちろんかっこいいところはかっこいいままありますけど、当時とは真逆の私は2楽章の美しさに魅了されるようになりまして、より深い意味のところでこの曲を理解できたのかなと。計8回あったので、毎回ちょっと弾き方や演奏を変えて、オケの掛け合いはどうやって帰ってくるのだろうと実験してみたりして、多方面からいろんな角度からこの曲を解釈しようと努めたのですけど、次の共演がN響との共演だったので、事前にいろんなことができてよかったなと思いました。

(N響と共演してみて)
背後から響いてくる音がすさまじいんですよね。なので本当に次に私が入るところを忘れてしまいそうになるほど美しくて、それだけでも幸せなんですけども、リアルタイムで会話をしているように、音を用いて話しているようなものなのですけど、それが言ったらすぐに返ってきて、ちょっとの変化も察知して違った音色を返してくださるという、このすごい稀有なやり取りができているというのが本当に幸せです。

全体を通して一つの大きな30分間の中で、ブルッフの熱い世界だとか愛情の深いかといって抒情的だけども男性的な骨太の線の太い集中した世界観というものに頭から没頭していただけるような演奏にしたいと思っているのですけど、特筆するならば、2楽章の神様にささげる祈りのような美しい旋律があるんですけど、弾いているだけで心が浄化されるものですし、その2楽章があるからこそ3楽章の爆発するエネルギーが引き立ってくるというのがあると思うんですが、そこのコントラストを意識的にかなり鮮やかにつけるように工夫したつもりなのですが、みなさまなりの感じ方でお楽しみいただければ嬉しいです。

続いてブラームスの交響曲第3番です。アクセルロッドはこの曲はシューマンが大きく影響しているといいます。

ジョン・アクセルロッド氏 インタビュー

(ブラームス 交響曲第3番)
交響曲第3番はクララ(シューマンの妻)へのラブレターと言ってもいいと思います。証拠もあります。すばらしい話なのですが、恩師であるシューマンへの尊敬の念から深い愛情と友情で結ばれながらも、生涯クララとブラームスはプラトニックな関係でした。第3楽章の美しいポーコ・アレグレット ハ短調の旋律はハンガリーやルーマニアの音楽をルーツとしていて、ある意味カンツォーネ、セレナードなのです。
そして、とても重油なのはローベルトとクララ、ブラームス 三者の関係が交響曲全体のライトモチーフ、根底にあるテーマだということです。誰もが耳にしたことのあるこの美しい旋律を聴くと、3人がソロ楽器やアンサンブルによって表現されているのがわかります。特に顕著なのが長いフェルマータのあと、ホルンの独奏はブラームス、甘く美しいオーボエはクララ、そして影のようなクラリネットとファゴットはローベルト。最後に第1バイオリンとチェロが奏でる主題、それはコン・アモーレ、深い愛情。「トリスタンとイゾルデ」や「ロミオとジュリエット」のように愛によって死んでしまう形ではなく、人と人の深い、健全な愛の形です。ハ短調の旋律です。短調は和声の特性上どちらかというと「暗い」「メランコリック」な響きがあります。ブラームスの音楽を表すのに一番使われるのが「暗い」「メランコリック」この二つの形容詞です。悪い意味での暗さではなく、ドイツ・ロマン主義的な暗さです。この旋律を表すのにぴったりの言葉があります。ドイツ語の「sehnsucht」という言葉です。ほかの言語でsehnsuchtにあたる単語はなく、ドイツ語だけがもつ特別なものです。憧憬・恋慕・願望・望郷・メランコリーといった意味がすべて込められています。
これほどまでに聴衆の心に響く理由は、若い時であれ大人になってからであれ、憧憬・恋慕・郷愁、片思いや失恋といった感情を誰もが経験しているからではないでしょうか。だからこの音楽に込められた「sehnsucht」深い憧憬に共感するのです。
このすばらしいメロディーを聴くと、ひざまずいてプロポーズしたくなる
「愛しています。結婚してください」バレンタインデーにぴったりじゃないですか?

個人的に確認した奏者

コンマス 篠崎史紀
フルート 甲斐雅之
オーボエ 吉村結実
ファゴット 宇賀神広宣
クラリネット 松本健司
ホルン 今井仁志/勝俣 泰/野見山和子
トランペット 菊本和昭
トロンボーン 吉川武典

感想

ブルッフ:バイオリン協奏曲第1番 ト長調 作品26

第1楽章

冒頭からソリストの情熱的な音に圧倒されました。その後に続くオーケストラの演奏も劇的で、胸が高鳴ります。けれど、このドラマティックさはオケが独自に生み出したというより、ソリストの情熱が引き出したものではないか、と感じました。ヴァイオリンの力がオーケストラ全体を鼓舞しているように思えます。

第2楽章

ソリストのインタビューにもあった通り、本当に美しい音楽。途中でただ伸ばしているだけなのに、非常に美しい金管の音が聴こえました。おそらくホルンでしょう。
実はこの録画を聴いた日に、同級生の訃報を受け取っていました。気持ちがどこにも収まらず、何もしなければずっとそのことばかり考えてしまいそうで、この演奏を再生したのですが――心に寄り添ってくれたのは、ヴァイオリンの嘆きや祈りではなく、後ろで伴奏するホルンのやさしい音色でした。ただ伸ばしているだけの響きなのに、どうしてあんなにもやさしく胸に響いたのでしょう。ソリストを包み込み、美しい音で寄り添うオーケストラ。その響きに、慰めを受けたのかもしれません。もちろん、ソリストの情感豊かな演奏も素晴らしく、素直な心をそのまま訴えてくるようでした。

第3楽章

冒頭はまさに「ガツン」と来る迫力! その強烈なコントラストと、ソリストに呼応するようにオーケストラも全力で応える。フィナーレに向かって駆け抜ける高揚感がカッコよくて、心を奮い立たせられるようでした。

服部百音さんのドレスもすごくきれいな色で、きれいな形で、とても似合っていて素敵でした!そして、バイオリンの音がとても好き。私の中で、注目したいバイオリニストさんとなりました。

ブラームス:交響曲第3番

アクセルロッドさんのインタビューはとても面白い内容でした。ご本人がとてもロマンチストで、ユーモアのある方なのだなぁと思いました。

私は普段、ブラームスの交響曲では第1番を中心に聴くことが多く、第3番を聴く機会はあまりありません。その理由は「ロマンティックすぎて、身の置き所に困るような気持ちになる」から。特に第3楽章は、いつも「メロドラマ!」と思ってしまいます。
今回の演奏もロマンティックさはたっぷりでしたが、そこにふわっと包み込むような柔らかさが加わり、丁寧に、愛情を紡ぐように表現されていたのが印象的でした。

ただ、NHK交響楽団の演奏としては、少し粗さを感じる場面もありました。最近のN響で聴くようなホルンの迫力や“すごみ”が、少し抑えられていた印象です。もっとも今回の演奏は3年前の収録。現在のN響サウンドとはまた違う印象を受けるのも当然かもしれません。

コンサートα

服部百音バイオリンリサイタル

フランク:バイオリン・ソナタ
ハチャトゥリヤン(編曲:ハイフェッツ):剣の舞


バイオリン:服部百音
ピアノ:亀井聖矢


2021年6月27日 悠邑故郷会館 大ホール(島根県)

感想

くっきりとした表現が美しいなぁと思いました。「剣の舞」は面白かった。

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