クラシック音楽館 2020年2月9日(日)放送

クラシック音楽館をいくつか撮りためていて、そろそろ消さなければならないので、内容を記録するとともに、感想なども残しておこうかと思います。
クラシック音楽館で好きなのは、リハーサル風景やそのときの指揮者の指示などに触れられたり、指揮者や奏者のインタビューなどが聞けることです。
それもちょっと残せたらなぁと思っています。

番組前半の内容

公演タイトル

第1924回定期演奏会
ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「死と変容」作品24
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲


指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
演奏:NHK交響楽団


2019年11月6日(水) 会場:サントリーホール

交響曲第3番はブロムシュテット氏がこよなく愛するシンフォニー。
「死と変容」はシュトラウス25歳の時の作品。

今回の定期演奏会の構成の特徴は、最初に大曲の交響曲第3番をし、休憩をはさんで短い2曲をするというもの。
ふつうは序曲などは先にして、最後に長い交響曲を持ってくることが多いのですが、今回はその逆。
これにはブロムシュテット氏のある狙いが込められているということでした。

ブロムシュテット氏のインタビューより

私の大先輩でゲヴァントハウス管弦楽団の常任指揮者を務めたアルトゥル・ニキシュ。彼の典型的なプログラムです。
オケと聴衆が元気な最初にいちばん重厚な作品を持ってきて、最後は軽めのアンコール曲的なもので締めた。
なかなかいいアイディアだと思う。
彼に敬意を表して一度やってみたかった

ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」

超有名曲。ナポレオンにささげて作曲をしたが、彼が権力を持ってがっかりして、「ナポレオンに捧ぐ」という言葉を消したというのは有名なエピソード。

ブロムシュテット氏のインタビューより

ベートーヴェンは自分の交響曲の中で「英雄」が一番だと思っていた。第5番や第9番より気に入っていた。
何しろ画期的で、それまでにない楽曲だった。あまりにも難しく重厚だったため、当時のオケから煙たがられてもいた。
それまでの交響曲の倍の長さだったから。技巧的にも知的にも多くを求められる曲。
同時に色々なことが起きるので常に手中していなければならない

リハーサル風景より

短くなりすぎないように!
短く だけどしっかりと

第4楽章の終盤にブロムシュテット氏がとりわけ技巧的で難しいというフレーズが登場する

同時に色々なことが起きていて、聞こえにくい場所だから説明しますね。
オーボエと第1クラリネットがテーマを演奏。
チェロと第2クラリネットは典型的な伴奏フレーズ。
そしてバイオリンは(♪?)それぞれが面白いことをやっているので、ホルンが弱ければそれが全部聞こえる。
ホルンが大きすぎると何も聞こえない。
ほかの楽器にとって弱い音は簡単でも、ホルンにとっては超絶技巧。
もう1回ファゴットとホルンだけで

これで大丈夫

リヒャルト・シュトラウス:交響詩「死と変容」作品24

理想へと邁進してきた芸術家の死の瞬間を描いた作品。

ブロムシュテット氏のインタビューより

『死と変容』は私が最も好きなシュトラウス作品の一つ。
大編成のオーケストラを巧みに使い、見事なまでにまとめあげている。
特に終盤、壮大なクライマックスに上り詰めた後に訪れる静かさ。
100人もの楽員が消え入るような音を鳴らすことがどんなにすごいことなのか。
大きく鳴らすことは簡単です。100人もいるのですから。
ピアニシモはフォルテシモよりもずっと大変。
そのことを聴衆にわかっていただければと思う

※個人的に調べた気になること
『死と変容』という邦題がとても気になる。原題はドイツ語で「Tod und Verklärung」。
『死と浄化』という邦題もあって、そっちのほうがキャッチーな感じもするけど、やっぱり『変容』がしっくりくる気がしますね。
Wikipediaにある、シュトラウスが死に際に一度意識を取り戻して
「私が『死と変容』のなかで作曲したことは全て正確だったと、今こそ言うことができる。私は今しがたそれを文字通り体験してきたのだよ」と言ったというエピソードが興味深い。

ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲

オペラ全体を通して繰り返し奏でられる重要なメロディがあります。

ブロムシュテット氏のインタビューより

覚えやすいメロディが形を変え、何度も登場する。
(♪ターンティーン ターンティーン タタタ ターラーララー)
コラールのようです。
ローマへの巡礼を終えた修道士たちがドイツへの帰路に着く場面。そこで歌われるのがこのコラール。
クラリネット、ファゴット、ホルンが静かに奏でて始まり、最後はオーケストラ全体で演奏。
トロンボーンがユニゾンで高らかに響かせる。
楽器の先端を上に向け、まるで音で聴衆を包み込むかのようだ

さらに大切なのは美女の誘惑を表すメロディ

美女たちが歌う官能的なメロディとコラールの対比が面白いと思う。
コンサートの最後に持ってくることで、より楽しめるかも

個人的に確認した奏者

コンマス 篠崎史紀
ホルン 石山直城/勝俣 泰/木川博史
トランペット 長谷川智之

感想

コロナの日本での最初の感染者が発見されたのが2020年1月16日でした。そして、印象的な大型クルーズ船の感染が2020年2月5日。緊急事態宣言が2020年4月7日なので、この演奏会はコロナ前の演奏になります。今見てると、客席の人たちが全然マスクをしていないのがとても印象的です。

交響曲第3番は有名曲中の有名曲。ブロムシュテット氏の指揮する英雄は、聞きやすいというか、すんなりと落ちてくるというか、私の好きなごちゃごちゃさせないベートーヴェンの交響曲だなぁと思います。

私の数少ないオケ経験のある1曲です。第3楽章のホルンの3重奏はとても印象的です。今回もNHK交響楽団の素晴らしい奏者の方のおかげで素敵な響きを聞くことができました。ホルンらしい響きのあるメロディだとほれぼれします。

3番は積極的に聞こうと思うほど好きではないのですが、やはりこうやって聞くと名曲だと思います。5番や9番ほどしつこくない展開とフィナーレが若々しさを感じるというか……。(でも、わたしはこってりした5番や9番も好きです)

そして、この演奏はかなり好きな演奏でした。録画保護だな……。

クラシック音楽館の好きなところは、演奏後の指揮者のねぎらいを見ることができること。ホルンをたたえているところで、私もバチバチと拍手できるのはちょっとだけコンサートを体験したみたいで嬉しいです。

「死と変容」というタイトルを耳にしたときに、私的には死後の生物的肉体の変容(つまり腐るというか…)を思い浮かべてしまうんですけど、そういうことではないんですよね。やっぱり聴き所のとらえにくい曲だなぁと思うのですが、ちょっとずつシュトラウスもいいなぁと思えるようになってきたかも。ちょっとこれは生のコンサートで聞きたい曲です。

「タンホイザー」序曲。
ホルン吹いているからワーグナー好きでしょ、とか、シュトラウス好きでしょ、とはたまに言われますが、あまり好んで聞かないんですよね。でも、キャッチーですよね。よく聞くメロディ。
そして、ホルンにほれぼれする。
ブロムシュテット氏のインタビューにも合ったとおり、コラールのようなメロディのホルンの美しさもいいけど、最後の最後のトロンボーンには痺れました!!
そして、この曲がコンサートの最後を飾るというのも、盛り上がって、すごくいい構成なのかもしれないなと思いました。

そして、やっぱりブロムシュテット氏は指揮しているときの表情がすごくいいなぁと思います。これを見れるのもテレビ番組の良さというか。幸せそうに奏者に対するリスペクトを感じる表情を、いつまでも見せていただきたいなと思います。いつまで現役で来てくださるだろう……。ご健康でおられることを祈ります。

番組後半 コンサートα

リヒャルト・シュトラウス:歌劇「インテルメッツォ」作品72 交響的間奏曲から第1曲第2曲


指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット 
管弦楽:NHK交響楽団 


1995年


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