クラシック音楽館 2020年10月4日(日)放送

クラシック音楽館をいくつか撮りためていて、そろそろ消さなければならないので、内容を記録するとともに、感想なども残しておこうかと思います。
クラシック音楽館で好きなのは、リハーサル風景やそのときの指揮者の指示などに触れられたり、指揮者や奏者のインタビューなどが聞けることです。
それもちょっと残せたらなぁと思っています。

N響演奏会 

NHK交響楽団 9月東京芸術劇場公演

ウェーベルン(シュウォーツ編):緩徐楽章(弦楽合奏版)
リヒャルト・シュトラウス:歌劇「カプリッチョ」から六重奏
リヒャルト・シュトラウス:組曲「町人貴族」


指揮:広上淳一
管弦楽:NHK交響楽団


2020年9月18日(金) 会場:東京芸術劇場

2020年のシーズンから東京芸術劇場での公演がスタートしました。新型コロナウィルスの影響でパーヴォ・ヤルヴィの代わりに指揮をしたのは広上淳一さんでした。

1曲目はウェーベルンの緩徐楽章。前衛音楽にたどりつく前の、若きウェーベルンの穏やかで甘く美しい作品です。

続いてリヒャルト・シュトラウスの最後の歌劇「カプリッチョ」から6重奏。オペラでの前奏曲の代わりに演奏されるこの作品、今回は弦楽合奏でお楽しみいただきます。

プログラムをしめくくるのはリヒャルト・シュトラウスの組曲「町人貴族」。17世紀のフランス。貴族になりたい大金持ちが巻き起こす騒動をシュトラウスが遊び心まんさいに作曲しました。

この曲でソロを演奏するのは、2020年ゲストコンサートマスターとして就任した白井圭さん(2023年3月まで就任されたようです)。

今回のプログラムについて広上さんに、音楽評論家の船木篤也さんからお話を伺ってもらいました。

(広上さん)パーヴォらしいよね。音楽一家に育った彼だからこそお父さんからいろんな話を聞いて、シュトラウスやウェーベルンにしても、十二音に行く前の世界をとりあげるということは、料理に例えると、あんまり料理名知らないから食わず嫌いの人は見逃してしまう。食べてみたらこんなおいしい料理という通好みのプラグラムじゃないですか。

(船木さん)ある意味ウェーベルンに関しては珍しい曲と言いますか

(広上さん)あのね、若いころにね。「夏の風の中で」という彼のオーケストラの作品で、調性の美しい曲をロイヤルフィルと録音したことがあったので、ぱっと譜面を見たときにそのイメージがわいてきましたので、これは好きになるぞという気がしましたね

(船木さん)ほかのシュトラウスの曲についてはどうでした?

(広上さん)やっぱりあのね、人の痛みとかね、人生の喜びも悲しみも、そういうものを達観というか人の機微がわかるぐらいの年齢になって、初めて、シュトラウスの世界、カプリッチョもそうなんですけど、少し世界に今回は近づけたかなと。わかったかといは言えないんだけど、笑いながら優しい、悲しみを包んでくれるような、そういう作品なので、つたないかもしれないけど、一生懸命やらせてもらおうと思いました。

感想

ウェーベルン(シュウォーツ編):緩徐楽章(弦楽合奏版)

とても心が揺さぶられる美しい曲でした。どのメロディが、というのはないけど、なんというか、ずっと音の流れに身を置いておきたい気持ちになります。
作曲者もあまりなじみがないうえ、前衛音楽にたどり着く前の曲、という説明に、普段は前衛的な曲を書く人なのだなぁと何気なくウィキペディアを読んでみたら、とんでもない人生を歩んでおられた上に、最期も衝撃でした。戦争で失われた才能がいくつもあったのだろうと改めて思いました。

リヒャルト・シュトラウス:歌劇「カプリッチョ」から六重奏

リヒャルト・シュトラウスというお名前と、「カプリッチョ」という響きからとても陽気な曲かと思っていたら、おもったよりも劇的で優美で流れるような曲でびっくりしました。わたしの「カプリッチョ」に持つ陽気な印象どこから来てるんだろう。

組曲「町人貴族」は喜劇のために作った舞台音楽から9曲選んで組曲としました。

「町人貴族」はフランスの劇作家モリエールの作で、主人公は大金持ちのジョルダン。貴族の仲間になりたい彼が巻き起こす大騒動を描いた明るい笑いに満ちた傑作です。

(広上さん)出だしの序曲なんかはね。ふざけていますよ。貴族じゃないのにとりあえず成金が、タンスからいろんなものを出して着たり、蝶ネクタイして気取って、これで舞踏会行って素敵な女性をナンパしようかなぁ…という、まさに自由な解釈ですけど、そういう僕らに想像させてくれる枠がある。勝手な解釈なんですけど、ミュージシャンにその解釈を話したら、笑いながら吹いてましたけど。

緻密なことが計算である程度青写真があって、自分にもそれを作れる自信があって、最終的に音楽家もお客さんも「楽しませてやろう」というやさしさのようなものをシュトラウス先生から感じますね。

(船木さん)それをやさしさっていうのはすごいですね。

(広上さん)モーツァルトに近いですよ。ベートーベン先生やマーラー先生はピュアじゃないですか。聞いてくれ!っていうのね。それとは全然違って優しいベールですよね。中はどんなにいろんな思いがあっても、それはあなた次第っていうね。僕らのほうにゆだねられている。気が付かないなら気が付かないでいいよ、というようなね

そんなリヒャルト・シュトラウスらしいしかけがこの曲にも。終曲には自分の作品やヴェルディなど往年の作曲家の旋律をパロディとして取り入れています。

(船木さん)ちょっとほろにがいところがありますよね。パロディーのようだけども、ただのふざけたパロディーではなくて、どこかちょっと哀愁がありますよね。こういう音楽が失われてしまった、というようなところもあるし、それで遊んでやれといういたずら心もあるし

(広上さん)だから、今の時期にぴったりかもしれませんね。パーヴォさんが予期してたわけでもないですし、皮肉ですけどね、そういう今の私たち人類の苦しい苦難の時に、シュトラウス先生のちょっとエスプリが効いていて、ほろ苦い、でもジョークで返して、「まぁなんとかなるぜ」って言ってくれていると解釈しています。

感想

リヒャルト・シュトラウス:組曲「町人貴族」

確かに楽しい。様々な曲が聴けて、いろんな場面があって、とても楽しかった。これ、歌劇はどんな感じなんだろうなぁ。
終曲のパロディは、わかったらもっと面白かったんだろうなぁと思いつつ、この時代にもパロディなんてあったんだなというのと、リヒャルト・シュトラウスって本当にどんな人だったんだろうなと、人柄に思いをはせてみたり…。

個人的に確認した奏者

コンマス 白川圭
ヴィオラ 佐々木 亮
チェロ 藤森亮一
フルート 神田寛明
オーボエ ?村結実
ファゴット 水谷上総
クラリネット 松本健司
ホルン 今井仁志
トランペット 長谷川智之
トロンボーン 黒金寛行

コンサートα

モスクワ、生涯で161曲を黙々と描き続けた知られざる巨匠。ニコライ・カプースチン(1937-2020)。クラシックにジャズを取り入れた独特の作風で熱狂的なファンが多い現代作曲家です。

2020年7月2日亡くなりました。クラシックに新たな息吹を吹き込んだカプースチン。追悼の意を込めてその魅力に迫ります。

近年、カプスーチンの作品を取り入れるピアニストが増えています。日本では辻井伸行さん。世界では、ルガンスキー、ユジャ・ワン、アムラン。共通するのは高い演奏技術を持ったピアニストであることです。

クラシックとジャズを融合した斬新な響きと、限界に挑むような超絶技巧。カプースチンの曲は超えるべき高い壁としてピアニストたちを魅了しているのです。

このカプースチンブームともいえる現象を巻き起こしたのは、日本人ピアニストの川上昌裕さんです。

衝撃というかこんな面白い曲なかったなと。人を喜ばせようとしているんだろうと思います。

本人とも親交の深かった川上昌裕さんによる追悼の演奏です。

カプースチン:8つの演奏会用エチュード作品40から 1.前奏曲
カプースチン:ピアノ・ソナタ第1番「ソナタ・ファンタジー」作品39から第4楽章
カプースチン:トッカティーナ 作品36
カプースチン:子守歌
カプースチン:8つの演奏会用エチュード作品40から 8.フィナーレ



ピアノ:川上昌裕

感想

カプースチン:8つの演奏会用エチュード作品40から 1.前奏曲

ものすごい鮮やか!
クラシックの融合ってよくわからないけど、ほぼジャズに聴こえます。ということは、私はジャズを響きで認識しているのかなぁ。
かっこいいです。

カプースチン:ピアノ・ソナタ第1番「ソナタ・ファンタジー」作品39から第4楽章

なんか、現代的なおしゃれな曲です。なんか、聴いていて、ちょっと恥ずかしくなる感じがする。なんでだろう。
でも、この響きどっかで味わったことがあると思ったら、たまに早く帰宅してテレビをつけるとNHKでしているKOBEのジャズ音楽の番組で流れてくる響きだー。

カプースチン:トッカティーナ 作品36

さわやかな曲でした。なんかこれも恥ずかしくなるようなさわやかさを感じました。なんでだろう。

カプースチン:子守歌

子守歌、というか、おしゃれ。ちょっと高級なラウンジで流れてそうな上品なジャズって感じがしました。

カプースチン:8つの演奏会用エチュード作品40から 8.フィナーレ

やはりかっこいい。8つとも聞いてみようと思います。


川上さんのカプースチンさんと楽譜を作る姿に、こうやって真摯な行動力によって、素晴らしいものが残されていくのだなぁとすごく感激しました。

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA