クラシック音楽館をいくつか撮りためていて、そろそろ消さなければならないので、内容を記録するとともに、感想なども残しておこうかと思います。
クラシック音楽館で好きなのは、リハーサル風景やそのときの指揮者の指示などに触れられたり、指揮者や奏者のインタビューなどが聞けることです。
それもちょっと残せたらなぁと思っています。
N響演奏会
NHK交響楽団 12月公演
プロコフィエフ:バレエ音楽「シンデレラ」作品87(抜粋)
チャイコフスキー:交響曲第4番へ短調作品36
指揮:井上道義
管弦楽:NHK交響楽団
2020年12月16日(水) 会場:サントリーホール
最初にお送りするのはバレエ音楽「シンデレラ」
指揮の井上道義は1946年東京生まれ。ミラノスカラ座主催の指揮者コンクールで優勝。国内外の著名な楽団と共演を重ねている、日本を代表する指揮者です。
井上道義氏
プロコフィエフは本当にオーケストレーションがうまくて、実はN響は「シンデレラ」をやってないと聞いたので、是非やろうと。
子供のころね、15年間ぐらいバレエやってたんですよ。だから、バレエ大好きでね。だからそれを、N響で音楽としてバレエをやるというは僕にとっても魅力です。
ボリショイ劇場で初演された「シンデレラ」は19世紀ロシアバレエの伝統を引き継いだ作品です。
チャイコフスキー氏にしろ、プロフィエフにしろストラヴィンスキーにしろ、みんなバレエを中心に音楽を作り始めているんですよ。ものすごくバレエが盛んな国。そして、あこがれのバレエなんですよね。プロコフィエフはいくつもバレエの曲を書いている
バレエ音楽「シンデレラ」の特徴は、巧みな作曲技法で情景や登場人物の心のうちを細やかに映し出していること。音楽によって情景が雄弁に語られるシーンが多くあります。
有名な12時の鐘が打たれるシーンがあるんですけど、夢見ていたのが全部嘘だということで、みんないままで王宮だと思っていたところがネズミの部屋だったということで、みんなキャーって逃げるでしょ。かっこつけていた人たちが、キャーキャーと逃げて、ヴァイオリンなんか弾けないほど早いところがあるんですよ。弾けなくていいんですよ。ネズミが逃げよう逃げようとしていて、あっちだ、こっちだ、ぶつかる!それが12時の鐘が描写されているんです。
作品のもう一つの特徴。それはバレエ音楽の大先輩であるチャイコフスキーのような、ロマンチックで美しいメロディにあふれていることです。
ロシアの伝統であるバイオリンのビブラートをたくさん使って、楽器をできるだけ鳴らして、響き渡るという大地に響き渡るという響きがあるんで、楽しい。
チャイコフスキーの交響曲第4番。この曲はチャイコフスキーの人生が困難だった時に作曲されています。長年にわたって援助を受けたパトロン、メック夫人と出会う一方で、結婚するもすぐに破綻。自殺をはかるほどに追い込まれていました。
(井上氏)
僕にとって4番が一番近く感じられますね。チャイコフスキーの叫びというのかな。社会でうまくはまらない自分。本当の自分は外に出すことができないということで、書いて、戦って。もうだめかもしれない。どうしよう。みたいな切羽詰まった音楽なんで好きなんですよ。
落ち込んで暗いんですよ。ドストエフスキーの世界ですから。まぁ夜が長いんですよ。その長い夜に自分の存在とか、ずっと考えるんですね。外は寒いから散歩しようという気にはならない。ずっとうちの中で悩みこむというその世界の激しい音楽だと思っています。
個人的に確認した奏者
コンマス 篠崎史紀
チェロ 小畠幸法
フルート 甲斐雅之
オーボエ 吉村結実
ファゴット 水谷上総
クラリネット 伊藤 圭/山根孝司
ホルン 今井仁志/石山直城/木川博史/野見山和子
トランペット 菊本和昭
感想
プロコフィエフ:バレエ音楽「シンデレラ」作品87(抜粋)
いろんな楽器の多彩な表現を楽しく聞ける曲だと思いました。相変わらず井上さんは衣装もおしゃれ。そして、指揮も美しい。
チャイコフスキー:交響曲第4番へ短調作品36
私も4番好きだなぁ。冒頭のホルンファンファーレの暗さとか、最初に、がっと何かが来る。チャイコフスキーの最もつらい時期に作られて暗い、という説明があったけど、でも、そのしんどさをそのままにせずに、振り払っていくような曲だなぁとも思うし、第4楽章の力強さや疾走感はたまらない曲だと思います。やっぱり好きだなぁ。5番や6番と比べてあまり有名ではない気もするけど、やっぱり名曲だなと思いました。
コンサートα追悼アレクサンドル・ヴェデルニコフ
コロナウィルス感染症で2020年10月29日に56歳で亡くなられた(そうだったのか…)アレクサンドル・ヴェデルニコフ氏。かつではボリショイ劇場で音楽監督を務め、デンマーク王立歌劇場で要職についていたヴェデルニコフ。その手腕は高く評価されていました。N響との初共演は2009年3月。以来定期的に共演を重ね、母国ロシア音楽を中心にスケールの大きな演奏を聞かせてくれていました。篤い信頼関係で結ばれ、数々の名演が生まれたヴェデルニコフとN響の演奏。
チャイコフスキーの「悲愴」について、ヴェデルニコフ氏のインタビュー
緩徐楽章が第2楽章でも第3楽章でもなく、最終楽章にくる。他に誰がこのような順で交響曲を書こうと思ったでしょうか。単に異なる構造の曲を作ったのではなく、チャイコフスキーが作品に込めたかった感情を表現するための正しい型が必要だったのです。作曲家が悲劇色の濃い音楽を書くとき、必ずしも不幸に直面しているわけではありません。チャイコフスキーの人生においても彼が悲劇に直面していたわけではないと思います。しかし彼はこの交響曲を書いてすぐに他界します。何か「上からの力」が働いたのでしょうか。チャイコフスキー自身もこれほどすぐコレラで死ぬとは想像していなかったでしょう。それから100年以上経ちました。チャイコフスキーが第6番のあとにどんな交響曲を書いたか、想像するのは難しいですね。
NHK交響楽団 第1772回定期公演
チャイコフスキー:バレエ音楽「眠りの森の美女」から「ワルツ」
チャイコフスキー:交響曲第6番(抜粋)
指揮:アレクサンドル・ヴェデルニコフ
管弦楽:NHK交響楽団
2014年1月10日 NHKホール
感想
ホルンに福川さん発見。
やはりチャイコフスキー、とても響きが美しいし、なんか、チャイコフスキーって、破綻することがあんまりないなぁなんて改めて思いました。
第6番はたぶん、中学校のころに父からCDをもらった関係もあって、かなり何回も聞いていますが、第3楽章の「チャチャチャチャチャチャーン」の後に、木管がきらめくようにチャラララララと細かい音をつなげるところを聞くたびに、「チャイコフスキー天才かよ……」と思ってしまいます……。(わかる?)
そして、そんな風にかっこよく勇ましく軽やかな第3楽章のあとに続く第4楽章……。たまらん(ヴェデルニコフ氏の演奏では、3楽章と4楽章の間に「間」は無くて、またしびれる…)。弦のゆったりとしたメロディの後に、ホルンのパパーンという音が続くのも「チャイコフスキー天才かよ(その2)」と思うところです。
もっと長生きをしていてくれたら、どんな曲が生まれただろうと思わせてくれる作曲家の一人がチャイコフスキーですが、ヴェデルニコフ氏のおっしゃる通り6番の後というのは想像するのも難しい。本当に「上からの力」によって召されたのではないかと思うぐらいに、完璧な終わり方だと。ベートーベンもあの曲で終わりなのが完成された姿な気がしてしまいます。マーラーやブラームスは、もっと先の曲があったらよかったのになぁなんて思いますが…。
しかし、ヴェデルニコフ氏、56歳でコロナでとは、つらい……。おそらく私がN響演奏のテレビ放映から離れていた時期に、共演を繰り返しておられたのだろうと思います。もっと聞いてみたかったです。
今(2024年)のコロナはそんなに大騒ぎされていませんが、初期はいろんな方が亡くなられたんだなと改めて思います。
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