クラシック音楽館 2021年11月21日(日)放送

クラシック音楽館をいくつか撮りためていて、そろそろ消さなければならないので、内容を記録するとともに、感想なども残しておこうかと思います。
クラシック音楽館で好きなのは、リハーサル風景やそのときの指揮者の指示などに触れられたり、指揮者や奏者のインタビューなどが聞けることです。
それもちょっと残せたらなぁと思っています。

N響第1939回定期公演 指揮ヘルベルト・ブロムシュテット 

NHK交響楽団 第1939回定期演奏会

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
ニールセン(ニルセン):交響曲第5番 作品50


指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
管弦楽:NHK交響楽団
バイオリン:レオニダス・カヴァコス


2021年10月16日(土) 会場:東京芸術劇場

2020年はコロナの影響で来日できなかったブロムシュテット氏の再来日の定期演奏会。

ソロを勤めるレオニダス・カヴァコス氏はギリシャ生まれ

ブロムシュテット氏インタビュー

カヴァコス氏について

我々はよく一緒に演奏します。人間的にも好きです。気取らず、まじめで家族思い。彼はバロックの名手でもあります。アンコールで弾いたバッハのパルティータはノンビブラートで演奏しました。バイオリンの美しい響きが聴き取れます。きれいで美しい。彼は好んでバロックを弾きます。彼のようなヴィルトゥオーゾが古楽奏法で弾くのは珍しいことで私も共感します。我々二人ともブラームスが大好きです。

ブラームスの原点はバッハ

ブラームスは1833年に生まれ、1897年に亡くなったロマン派時代の作曲家です。しかし彼の土台はバッハです。ブラームスは古楽をよく知っていました。そこが私と共通します。ロマン派の最盛期にありながら、古典的技法に従う。そこがワーグナーと違うところです。バッハとヘンデルがそこにあるのです。ブラームスはピアノのための「ヘンデルの主題による変奏曲」も書いています。バロック音楽を信奉していたのです。私もそこに共感します。私もロマン派が好きですが、原点はバッハです。

個人的に確認した奏者

コンマス 白井圭
ヴァイオリン 郷古 廉(だと思うんだけど)
ヴィオラ 村上淳一郎
チェロ 辻?本 玲
フルート 神田寛明
オーボエ 青山聖樹
ファゴット 水谷上総
クラリネット 松本健司
ホルン 福川伸陽/勝俣 泰/野見山和子
トランペット 長谷川智之
チューバ 池田幸広

感想

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲

「三大ヴァイオリン協奏曲の一つだったっけ?」
そんなあやふやな記憶のまま拝聴。メンデルスゾーンとチャイコフスキーは印象に残っているけど……え? チャイコフスキーではなくて、ベートーヴェンだったの? とあとで気づく始末。正直、ベートーヴェンは、ブラームスより印象に残ってなかったかも。

でも冒頭、ヴァイオリンが出てくる前から木管に心を奪われる。特に第2楽章のオーボエの美しさが際立っていて、思わず耳が釘付けに。今おられる方ではないなぁと思ったら……2023年に退団されていたんですね。そういえば2024年ごろ、オーボエがちょっと物足りないなと感じていた時期がありましたが、今思えばその時期と重なるかもしれません。でも、2025年に入ってからは「最近、いいな」と思えるようになってきていて、それもまた感慨深い(完全に余談)。

第2楽章はやっぱり美しい。ホルンの伸ばしの一音だけで、ハッと息を呑む。さすが福川さん……。

第3楽章の最後の盛り上がりはワクワクしたなぁ。

とはいえ、個人的な感想ではありますが、全体的には正直、こちらの集中力がちょっと途切れてしまう演奏だったかもしれません。個々の美しさは感じつつも、どこか全体に没入できないもどかしさが残る、そんな印象でした。

ソロ奏者のアンコールは、楽団の人がどんな表情で聴いておられるのかを見てしまいます(笑)

スウェーデン出身のブロムシュテットは北欧の音楽も得意としています。

ブロムシュテット氏インタビュー

ニルセンはブラームスの後継者です。デンマークの国境はドイツの北でつながっていて、両国の国境は歴史上あちらこちらへと動いています。人々も両方の言語を話します。ブラームスの一族はデンマーク国境近くの出身です。しかし、これは地理的な話です。重要なのはニルセンの音楽言語はドイツ音楽の発展形ということです。彼はドイツの古典派とロマン派の伝統を受け入れた上で独自のやり方で現代化しました。
特に和声は独特です。しかしドイツの伝統の後継者なのです。
ブラームスの後、ドイツ音楽は別の方向に行きました。シュトラウスやレーガーです。でもニルセンはその路線はとらず、ブラームスと結びついていました。
古典的でロマン的ですが、もちろん半世紀後なので新しい時代性も聴き取れます。特に和声はずっと自由でシェーンベルクのような無調ではないものの、調性を拡大しています。澄んだ美しい響きで、音を飾り立てずに、一つ一つの音を大切にしています。

ブロムシュテットはリハーサルで、ニルセン独特の複雑な音楽を解きほぐして、絶妙なバランスを作り上げていきます。

リハーサル中の言葉「重要で美しいハーモニーですが、主役ではありません。大事なのはホルンと弦楽器です」

感想

ニルセン:交響曲第5番

「のだめ」でニルセンを知った私は、いまだに「ニールセン」と言ってしまう。第4番「不滅」から入った口だけど、第3番も第5番も大好き。

さて、完全に余談なのだけど、ようやく「指揮者が弦楽器より先に入ってくる理由」がわかりました。コロナ禍の影響で、指揮者が弦奏者の間を縫って入場するのを避けていたんですね。なるほど納得。

ブロムシュテット氏のインタビューで、私がニルセンに惹かれる理由が腑に落ちました。たぶん、バッハ→ブラームス→ニルセンという流れで好きなんだな、と。以前から、ニルセンの独特な和音が気になっていたのですが、インタビューの中の「和声はずっと自由」「澄んだ美しい響きで、音を飾り立てずに一つ一つの音を大切にしています」ということで、ニルセンの和音に何か素敵なものを感じてたのは気のせいではなかったのだなと思いました。

どこか「和」のような感触を感じるのは私の気のせいかもしれませんが……ヴォーン・ウィリアムズにも同じような魅力を感じるんですよね。音楽理論に明るいわけではないけれど、何かがつながっているのかな、なんて。

演奏は本当に素晴らしかったです。トランペットとスネアドラムが軍隊のような緊張感を描き出し、その後に訪れる壮大で一体感のある響きに、鳥肌が立ちました。ニルセンとブラームスではホルンの音色のアプローチも全く違うことに、改めて感動。

ちなみに、ブロムシュテット氏のニルセン交響曲のCDは、もちろん私の愛聴盤の一つです。

コンサートα

NHK交響楽団 第1760回定期公演

ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲


指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
管弦楽:NHK交響楽団


2013年9月11日 サントリーホール

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