クラシック音楽館 2022年2月6日(日)放送

クラシック音楽館をいくつか撮りためていて、そろそろ消さなければならないので、内容を記録するとともに、感想なども残しておこうかと思います。
クラシック音楽館で好きなのは、リハーサル風景やそのときの指揮者の指示などに触れられたり、指揮者や奏者のインタビューなどが聞けることです。
それもちょっと残せたらなぁと思っています。

N響演奏会 

NHK交響楽団 第1946回定期演奏会

チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲 イ長調 作品33(原典版)
(アンコール)カタルーニャ民謡/鳥の歌
ムソルグフスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」


指揮:ガエタノ・デスピノーサ
管弦楽:NHK交響楽団
チェロ:佐藤晴真


2021年12月10日(金) 会場:東京芸術劇場

指揮のガエタノ・デスピノーサ氏はバイオリニストとしてキャリアをスタートして、ドレスデン国立歌劇場のコンサートマスターを勤めました。ファビオ・ルイージとの出会いをきっかけに指揮者に転向。

佐藤晴真氏は2019年ミュンヘン国際音楽コンクールで優勝。ロココ風の主題による変奏曲は献呈されたフィッツェンハーゲンによる改訂とチャイコフスキーの原点版の二つあるが、佐藤さんは原典版を選んだ。

佐藤晴真氏 インタビュー

(原典版での演奏について)ベルリンの師匠(?J=P. マインツ氏)がロココでは原典版を演奏されていて、その影響です。オーケストラとでは原典版しかやったことがないです。チェリストが改訂したものが一般的に弾かれているんですけど、そっちのバージョンでは、一番最後に盛り上がるバリエーションを持ってくるという効果的な書かれ方をしているんですけど、原典版は盛り上がりもありつつもともと作曲家が意図していたずっと大きいラインで一つの長い息で曲全体を止まらずに演奏できるという感情的な部分、気持ちの部分というのが原典版の方がうまくまとまって、納得できる部分が大きい気がします。
(改訂版では第8変奏は省略され、7つの順番も大きく変わっています。第7変奏が中盤に位置し、第3変奏が終盤に移動しています)
第3変奏ではちょっと悲しみに満ちたセンチメンタルなところがあって、第7変奏曲はきれいな女性一人に向けて歌うというような愛のたくさん詰まった変奏曲なんですけど、いろんなことを経たうえで第7変奏曲の愛を歌うほうが生きていると思っていて、僕の感触では原典のほうがいろんな変奏曲の移り変わりがあって、最後にやっぱり愛を歌いたいというところが、この曲のクライマックスかなと思っています。

原曲は10曲からなるピアノ曲です。

ガエタノ・デスピノーサ氏 インタビュー

(ムソルグスキー組曲「展覧会の絵」について)
これほど人気のあるのは小さな交響詩を集めたミニチュアのような自由な形式によるものです。まるで10曲の交響詩のようです。大きな想像力の塊であるにもかかわらず、いくつかの奇跡によって、秘密の要素が働いて、ひとつの作品としてまとまっています。驚くべきことです。彼の作曲法はベートーベンやブラームスやチャイコフスキーとは異なります。彼らにはテーマがあり、反復し補完し、必要なら対立するテーマも提示する。しかし、ムソルグスキーはほとんど自由に発展させる形で作曲したのです。
ムソルグスキーの音楽語法は唯一無二だと言えると思います。当時としては、ということだけでなく一般的に革新的なものだと言えるでしょう。ストラヴィンスキーの言葉を借りれば「永遠に新しい」のです。だからこそ長い間、過小評価されていた作曲家でもあるのです。同時代のリムスキー・コルサコフたちは理解されない彼を助けなければと思っていたようです。(ラヴェルの編曲は)ムソルグスキーの死後できた編曲ということもあって、ラヴェルが変更を加えているところもあります。彼を助けようと思ったのかもしれませんね。ラヴェルはムソルグスキーの同時代の作曲家、いわば最初のファンよりも若い世代なので、もっと広い視野で作曲家の意図をより理解できたのかもしれません。ムソルグスキー亡き後の有名なコラボレーションです。とても実り多くオーケストレーションはただただすばらしいの一言ですね。

個人的に確認した奏者

コンマス 伊藤亮太郎
ヴィオラ 村上淳一郎
チェロ 藤森亮一
フルート 神田寛明
オーボエ 青山聖樹
ファゴット 水谷上総
クラリネット 松本健司
ホルン 今井仁志/勝俣 泰
トランペット 長谷川智之
トロンボーン 新田幹男/黒金寛行

感想

チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲

初めて聴いた曲です。チェロの瑞々しくも深い響き、特に低音の響きに心揺さぶられました。アンコールの曲を聞いていて、むしろ無伴奏の曲をもっと聴きたいと思いました。

ムソルグフスキー作曲/ラヴェル編曲:組曲「展覧会の絵」

冒頭「プロムナード」

最初のトランペットが素晴らしい。つい「ホルンだったっけ?」と思ってしまうのですが、それはその後にホルンでも「プロムナード」が現れるからですね。ただホルンの方は勇ましさよりも、柔らかく語りかけるような響き。冒頭のトランペットの鮮烈さが強烈なので、毎回「あれ?」と思う自分がいます。

「古い城」

アルトサックスの美しさに陶酔。艶やかなファゴットとともに、なんとも幻想的で深い色彩の世界が広がりました。ラヴェルの編曲の中でも名場面のひとつですね。

「ビドロ」

重量感ある旋律が印象的。私はこの曲が特に好きで、どっしりと歩みを進めるような響きに惹かれます。

「バーバ・ヤガー」ー「キエフの大門」

この移り変わりはまさに天才的。N響の演奏は力押しではなく格調高く、流れるように「キエフの大門」へつながっていきました。そこからシンバルが炸裂する瞬間、鳥肌がざわっと。フィナーレは圧巻で、心の中ではブラボーの嵐!観客の皆さんから「ブラボー」が出ないことが不思議なぐらいでしたが、そうだ、まだコロナの影響で皆さんマスクされてる感じだったわ。

打楽器の魅力

「展覧会の絵」を聴くたびに思うのですが、打楽器の役割は本当に大きいですね。今回も見事で、視線がもうかっこよいし、演奏もかっこよい!


感想のまとめ

「プロムナード」のメロディだけでも天才的なのに、各曲がそれぞれに個性豊か。私は特に「ビドロ」と「バーバ・ヤガー」がお気に入りです。そして、今回のN響の「展覧会の絵」、意外にもあまり聴いた記憶がなかったので新鮮でした。デスピノーサ氏(襟元が超おしゃれ)のスタイリッシュな指揮ぶりとあわせて、強く印象に残る演奏でした。

コンサートα

東京フィルハーモニー交響楽団第138回東京オペラシティ定期シリーズ

プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」組曲から


指揮:アンドレア・バッティストーニ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団


2021年5月12日 東京オペラシティ

クラシック音楽館でN響以外の演奏を聞けるのは貴重。ちょいちょいあるといいのにな。

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